定本『隠喩としての建築』より

 以下、定本『隠喩としての建築』より。

 たとえば、ここにオレンジ、すいか、テニスボール、フットボールがある。
それらを記憶にとどめるためには分類するほかない。


A           __________
           /          \ 
          /            \ 
         |     (果物)     |
   ______|___        ___|______
  /      |オレ \      /   |      \  
 /        \ ンジ\    /すいか/        \ 
|          \___|__|___/          |
|     (小)   ___|__|___   (大)     |
|          /テニス|  |フット\          |        
 \        /ボール/    \ボール\        /         
  \______|___/      \___|______/
         |     (ボール)    |
         |              |
          \            /
           \__________/

ある人は、それらをオレンジとすいか(果物)、テニスボールとフットボール(ボール)に分けるだろうし、
他の人は、それらを形態によって、オレンジとテニスボール(小)、すいかとフットボール(大)に分ける
だろう。


いずれの分類もそれだけではツリーになる(図BおよびC)。

B         ◯             C        ◯ 
         /\                     /\
        /  \                   /  \ 
       /    \             小さな球◯    ◯大きな卵形
      /      \               / \  / \
   果物◯        ◯ボール          /   \/   \ 
    / \      / \           /    /\    \
   /   \    /   \         /    /  \    \  
  ◯     ◯  ◯     ◯       ◯    ◯    ◯    ◯
 オレンジ  すいか テニス   フット    オレンジ すいか   テニス   フット
           ボール   ボール               ボール   ボール


二つを合わせると、セミ・ラティスになる(図D)。

           
           D       __◯__      
                __/ /\ \__ 
              _/   /  \   \_
           果物◯   小◯    ◯大   ◯ボール  
             |\  / \  / \  /|
             | \/   \/   \/ | 
             | /\   /\   /\ |
             |/  \ /  \ /  \|
             ◯    ◯    ◯    ◯
           オレンジ  すいか   テニス   フット
                       ボール   ボール

それらを集合論的に示すと、図Aのようになる。しかし、後者は視覚化するのが難しいので、
一般に、われわれが明瞭に視覚化できるのは、ツリーであり、実際、自然都市のようにその
内部で集合がオーヴァーラップするようなセミ・ラティス構造を思いうかべねばならないと
き、それをツリーに還元してしまう傾向がある。
  (略)
 もしツリーが厳格に守られると、都市も組織も荒廃せざるをえない。現代都市計画はその
ようなものだとアレグザンダーはいう。ブラジリアのような人口都市における生活の荒廃感
はよく知られている。『いかなる有機体においても、過度の区画化と内的要素の解離は、き
たるべき崩壊の最初のしるしである。解離は社会においては混乱であり、個人においては分
裂病とさしせまった自殺の徴候である』(Chiristopher Alexander "A city is not a tree"
「都市はツリーではない」1965)。

(定本『隠喩としての建築』53〜59頁より)
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by yojisekimoto | 2010-05-19 21:41 | 柄谷行人


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