吉本隆明のタームと柄谷行人の交換図

最近亡くなった吉本隆明の『共同幻想論』におけるタームを柄谷行人の交換図に当てはめると、

 第一図

共同幻想 |対幻想
_____|____ 平等 指示表出
個体幻想 | X
     |
    自由
   自己表出

となるだろう(柄谷『世界史の構造』、特に第一部は『共同幻想論』に重なる部分が多い)。

ただしこれだとアソシエーションが欠如しているので、(自己幻想、個体幻想をアソシエーションに転化する道を選ぶとして)以下のようになるべきだった。

 第二図
    
共同幻想 |対幻想B
_____|____ 平等 指示表出
対幻想A |個体幻想
     |
    自由
   自己表出

厳密にはネーションの一部に対幻想が組み込まれているわけだから以下になるだろう。

     |____|_ 
共同幻想 |対幻想B|
_____|____|_ 平等 指示表出
対幻想A |個体幻想
     |
    自由
   自己表出


右下のアソシエーションは吉本自身が下町の思想職人として体現、自己表出したとも言えるが、そこには神格化の危険が伴う(*)。

吉本の対幻想概念に第二図のようなA、Bの区別がないのは文学的なフロイト、マルクス主義を受け継いだからである(第一図にあるように吉本の対幻想は未分化で曖昧だったが、そこにこそ可能性もあったのだ)。

『共同幻想論』においては性的事象は国家に対するタブーとしてあくまで美学的な領域における侵犯として機能する。
(中上健次が『共同幻想論』を評価したのもそうした侵犯としてだが、中上にはAとB二つの対幻想、とりわけAの市場経済への視座もあった。)

交換C、市場経済の領域(対幻想概念A)においては花田との再生産表式をめぐる論争(http://yojiseki.exblog.jp/14944588/)を発展させる余地があったが、政治的なポジショントークに終始し、発展しなかった。

さらに言えば、吉本が自己表出と指示表出を二律背反的に捉えたことも概念の発展を阻害した原因だったように思う。

*注:
先日(20120330)の柄谷行人の神保町での講演で、吉本隆明の発行した「試行」を柄谷が購読していたという話題が出た。吉本は柄谷に「(イデオロギー的な)色のついてない商業誌に書いた方がいい」とアドバイスしたそうだ。こういった点は娘の吉本ばななに「酒の席で偉そうにするな」とアドバイスしたこととも繋がり、吉本はある種の市井の下町的アソシエーションを体現していた部分のように思う。
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by yojisekimoto | 2012-04-02 23:32 | 柄谷行人


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