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デュルケム『自殺論』と同業組合

ドゥルーズを読んでいると、集団主義のデュルケムより個人主義?のタルドの方が面白い、などと言って見たくなるが、デュルケムもやはり重要だ。
例えば、興味深いことに、デュルケムの著名な『自殺論』のラストにおいては自殺を防ぐセーフティネットとして、同業組合が言及されている。

http://keisic.com/suicide.htm#3-3

宗教社会、家族社会、政治社会などのほかにも、これまで問題にされなかったもう一つの社会がある。それは、同種のすべての労働者、あるいは同じ職能のすべての仲間がむすびついて形成する職業集団ないしは同業組合である。p.489、中公文庫

この社会は、同じ労働に従事している個人によって構成され、かれらの利害は連帯し、一体化してさえいるので、社会的な観念や感情をはぐくむうえでこれほどうってつけの地盤はない。出自、教養、職業などが同一のため、職業活動は共同生活にとってこのうえなく豊富な素材をなしている。p.489

職業集団は、他のあらゆる集団にもまして次の三つの利点をそなえている。すなわち、常時存在していること、どこにでも存在していること、そしてその影響は生活の大部分の面にわたっていること、である。p.486

同業組合は、個人をとり囲み、精神的孤立状態から個人を引きだすにたるだけの十分なものをそなえている。他の集団が現在問題の多いものであるだけに、それは、この不可欠な役目を果たすことのできる唯一の集団となっている。p.486


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追記:


デュルケムの採用した自殺の4類型を無理矢理柄谷の交換図にあてはめると、以下になるだろう。

   宿命的
 利己的十利他的
   アノミー X

X=アソシエーション

http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1234276402

http://ja.wikipedia.org/wiki/エミール・デュルケーム#.E8.87.AA.E6.AE.BA.E3.81.AE.E5.9B.9B.E5.88.86.E9.A1.9E

利他的自殺(集団本位的自殺)……凝集性の高い帰属集団の絶対的な価値規範・同調圧力を押し付けられる状況において、その状況に上手く適応できずに自己犠牲のプレッシャーに抑圧されて自罰的に自殺する類型。集団主義的環境への適応障害の悪化。

利己的自殺(自己本位的自殺)……凝集性の低い帰属集団で他者と価値観・目的意識を共有できないことによって、『極度の孤独感(不安感)・無価値感』を感じて自己疎外的に自殺する類型。個人主義的環境への適応障害の悪化。

アノミー的自殺(匿名的自殺)……中心的価値基準や社会規範が不在のアノミー社会(無規範社会)において、『際限のない選択の自由』に上手く適応できずに生きる方向性(自己の存在意義)を見失って虚無的に自殺する類型。自由な欲望追求(幸福追求)の結果として、理想自我と現実自我の落差が限界を超えて大きく開き、自分の努力によって主観的な幸福を実現できないことに絶望する類型。自由主義的環境への適応障害の悪化。

宿命的自殺……帰属集団の行為規範や道徳的価値観(伝統・慣習)などによって、『個人の行動の選択肢』が狭められ自己束縛状態に追い込まれて自殺する類型。絶対に職業的責任を放棄できないと認知するワーカホリックの人や政治的社会の権力者が自殺するケースなどが該当する。伝統主義(権威主義)的環境への適応障害の悪化。

by yojisekimoto | 2012-11-11 01:06 | 研究


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