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今まで柄谷行人は小林秀雄や吉本隆明を超えたところからスタートしたと思い込んでいたが、最近そうではないと思うようになった。 柄谷が吉本を超えたのは『世界史の構造』からだし、小林を超えるのは今年出るであろう柳田国男論からだろう。 最近あった講義を聞いたところによれば、多分、小林が講演で引用した柳田による魂の説明を柄谷は別の左翼的な形で引用するだろう、、、、 さて本題は小林秀雄である。 ドゥルーズを小林が生前誉めていたという話があるが、それを確かめに某大学にある小林文庫の蔵書にある『ベルクソンの哲学』の棒線箇所を調べてきた(最近大澤信亮も小林秀雄の蔵書で赤線の引かれたベルグソンの哲学を確認している)。 本居宣長関連の蔵書が多かったが、『思想と動くもの』『悲しき熱帯』『ニーチェと哲学』に赤鉛筆で線が引いてあった。 『プルーストとシーニュ』もあったがこちらは線が引いてなかった。 基本的に線が引いてある蔵書は少ない。しかも文字の書き込みがあるのはほとんどない。 書き込みのある『ベルクソンと哲学』は珍しいのではないか? (136頁中約60頁に赤鉛筆または青い万年筆による棒線があった。鉛筆によるものも数カ所あった。文字の書き込みは以下のなかにあるものがすべてである。) また調べてみたい。 参考: http://www.geocities.co.jp/CollegeLife-Cafe/5059/laugh1.html 『ユリイカ(2001年6月号)』p108、p114、p218。 上記ユリイカの鈴木和成氏の論考によれば大岡昇平全集別巻に大岡昇平の証言あるという。 小林秀雄がドゥルーズに関して褒めていたと前田英樹なども書いているが(『小林秀雄』195頁)、郡司勝義『小林秀雄の思い出』に孫引きされているだけで、出典として指摘される肝心の『文学界』1979年11月号の河上徹太郎との対談(「歴史について」)にはない。 郡司が編集者のような立場だったみたいなのでゲラから引用したのだろう(「考える人」2013年4月号のCDにはその内容は収められていなかったので推測の域を出ない)。 <小林秀雄は言う。 「ドゥルーズという若い人がいてね、この人の『ベルクソニスム』という本は なかなかいい。ベルクソンの影響された当のものは、プラトンしかない、 と言っているんだな。つまり『持続』なんだよ、要するに、こう流れる、 これは『歴史』なんだよ」>(郡司勝義『小林秀雄の思ひ出』262頁) <…それで、ジル・ドゥルーズの『べルグソン』の訳本(宇波彰訳、一九七四年)が出たときに——あれは『本居宣長』が終ったころだと思いますけれど——彼の心残りは『感想』だろう、次は『感想』をやるだろうと思って、ちょうど間違えて二冊買っちゃったから、彼に一冊贈ったんですよ。アインシュタインとの論争では、ベルグソンがだめだということばかり言われるけれども、その経過においてベルグソンはとてもいいことを言ってるんだということが、書かれているんです。 大江 ドゥルーズが書いているわけですか。 大岡 ええ、「註」の中に書いてあるんです。そのほか、ベルグソンについて、差違から入った、新しい見方もある。その時はとっても喜んでたそうですよ。だいたい礼を言わない男でね。ぼくは彼が礼を言ったの聞いたことがないですよ。(笑)> (大岡昇平「追悼小林秀雄 伝えられたもの 対談大江健三郎」大岡昇平全集別巻1996.8、669頁より。初出『文学界』1983.5)
by yojisekimoto
| 2013-04-12 17:01
| 文学
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