ピケティとマルクスについて:メモ

r(資本収益率)>g(経済成長率)

基本的には、主に全体の「資本(資産)」(r)を扱った『21世紀の資本』は、主に
「所得」(g )を扱ったマルクスの『資本論』とは補完関係にある。
物神化=自然環境を貨幣換算する危険は、ピケティより先に資本家が行っている
のだから、ピケティだけを批判しても仕方ない、、、、
マルクスは資産の1/10ほどが交換過程に入ると書いたが、そうしたマルクスの試
行錯誤をピケティは知らない(ギッフェン、コルクホーンの統計をマルクスが利用
しなかったことが批判される(61,238,注38頁))。
ピケティはそもそも貧富の差を論じても労働者の労働環境に興味はない。資本主義の第1,2
基本法則も労働環境とは関係ない(ちなみにマルクスの「資本の有機的構成」c/vに
おける不変資本cと可変資本vを、それぞれ資本と所得に見立てれば、ピケティの
第一基本法則(56頁)における資本/所得比率βがフラクタルに出来上がる。固定資本と
流動資本にも対応させ得るが、それだと労働の観点が消える)。
r>gは、拡大再生産を意味する(生産手段の所有者に産業利潤はもちろん、より多くの利子・
地代による利益が還流する。消費手段における不変資本はgとしてみなされ相対的に減る)。
12頁,主に236頁のマルクスに関する論評が重要だ。マルクスを解釈するうえでβ=s/gにお
ける成長率g=0のときを想定すれば利潤率の低下が理解出来るとされる。
(後述するマルクスの記号を使えばr>(g=M/C+V)ということになる。利潤は部門2のもの)
ただ生産性の成長=相対的剰余価値をマルクスが想定していないというのはシュンペーター
経由の誤解だ。

(注)ピケティは実証分析などに基づき、格差拡大を説明できる関係式として基本法則↓を示した。

r = the rate of return on capital(資本収益率)
   la rentabilité du capital (r)
g = the growth rate of economy(経済成長率)
  la croissance économique (g)

第一基本法則:α=r×β (56頁,1章)、第二基本法則:β=s/g (173頁,5章)

資本/所得比率β、所得の中の資本シェアα、資本収益率r、貯蓄率s、成長率g
(例:所得の中の資本シェアα=30%,資本収益率r=5%,資本/所得率β=600%、57頁より)
(例:「ある国が所得の12%を毎年貯金しており、当初の資本ストックが所得6年分とすると、
資本ストックの成長率は年間2パーセントだ。つまり国民所得とまったく同じ比率であり、
資本/所得率は安定状態を保つ。」178頁より)

ピケティは、下記の改変マルクス経済表左側の本源的蓄積と固定資本もしくは不変資本を
議論の俎上に載せたと言える。世界政府という新たな部門4を累進課税徴収の主体として
付け加えるべきかも知れない。
カントなら連合体を部門1と2の間につくるだろうが(カレツキ経済表がそれだ)、
ヘーゲル的(マルクスも)には超越的主体が必要になる。
繰り返しになるが、(主に資産,資本を扱った)ピケティと(主に所得,労賃を扱った)マルクス
とは互いに補完関係にある。


ピケティの   改変マルクス経済表。数字は資本論章番号
言う資本   (再生産表式と同じ部門順に改変、中間層が引き裂かれるイメージ。点線実線の区別は省略)
  ↓
 ___
/   \
  _____  (技術革新等 | (労働時間
 |第1部門 |  空間的差異)|絶 の延長)              2:21  
 |機械と原料|___相対的__|対_____       _追加的不変資本___  Mc
 |_____|   剰余価値 |的   ___産業利潤_/_追加的可変資本___\ Mv
本          1:10 |剰 利|        \_個人的消費_____/|Mk
 固定資本2:9 流動資本   |余 潤|___利子_____単利_________|
  \機械)(原料/\     |価  |      \___複利________/|
  (土地 消耗品) \    |値 /|___地代_____差額地代_______|
源   \  / (労働力)  | /          \_絶対地代______/|
  不変資本C 可変資本V 剰余価値M 生産物W                  |
     1:6 ____\____  /                     |
 1:24      /  \    /                      |
的 ____    /   労\  /    _産業利潤___3:1〜____   |
 |第2部門|  /     賃\/   利|                \  |
 |生活手段| /       /\   潤|_利子_____3:21〜____| |
 |____|/   労賃__/__\ / |        3:24     | |  
蓄     /    /  /   \\  |_地代_____3:37~44__| |
     /    /  /    /\\          3:45     | |
  不変資本  可変資本/ 剰余価値  生産物____________G____/_/  
           /        /        四:  ◎ 貨幣     
積 ____    /        /             ◯ 
 |第3部門|  /        /          三: /| 一般的 
 |総生産物| /        /             ☆☆☆     1:1、3、
 |____|/ _______/_             ☆☆☆     3:33
      /                      二:|/  拡大
  不変資本  可変資本  剰余価値  生産物        ◯ 
                           形態一:◯=☆ 単純 
                       (相対的価値形態 = 等価形態)

http://nam-students.blogspot.jp/2011/10/blog-post_29.html?m=0#_table

用語解説:
単純再生産の場合、1(V+M)=2(c)       1:21、2:20
拡大再生産の場合、1(V+Mv+Mk)=2(c+Mc)  2:21
剰余価値率または搾取率m'=利潤m/賃金v    1:7
利潤率はp'=m/(c+v)               3:2、13
(Mc,Mv,Mkに関しては略語は後年の解説者が使用したもの)

単純再生産の場合、1(V+M)=2(C)、       
拡大再生産の場合、1(V+M) > 2(C)、で生産手段への投資が増えることになるが、
それは消費手段部門の不変資本が相対的に減ることを意味する。


  絶対的
 B | A
拡大-十-単純
 C | D
  相対的

マルクスはABCDという論理展開で記述してゆく。
それはカントの質量関係様相というカテゴリーに似ている。
宇野弘蔵はこれをヘーゲル的トリアーデに変換した。
生産流通分配の順序を流通を先にし流通生産分配にしたのだ。
宇野弘蔵の経済原論岩波全書は、それらを知り、
経済政策論とセットなら読む価値はある。

マルクスの体系は、価値形態論、再生産表式の二つを
知ればそれでいいと個人的には思う。
特にほとんどの議論が再生産表式で完結する。

マルクスの頭のなかはこうなっている↓
http://2.bp.blogspot.com/-xuLhbrxVrHI/Tq_GZcWjCMI/AAAAAAAADDY/svEAgSpeGFg/s1600/13.gif
http://3.bp.blogspot.com/-19fBFbP8WwA/Tq_GZpwzZgI/AAAAAAAADDk/lAm4SlJbWhc/s1600/12.jpg
(再生産表式の前身であるマルクス経済表。部門1と2が逆なことに注意)

ガンジーやプルードンが目指したように分配は生産の現場でなされなければならないというのが
原則だが、資産課税を徴収する世界連合、世界国家など認められないと言う人には以下の言葉を贈る。

「孤立を求めて連帯を恐れず」by柄谷行人

追記:
ピケティは農業を捨てることで経済成長する(した)と考えている節があって(124,230頁)、
これは今後データを取る上でポイントになると思う。

ピケティへの批判に住宅問題が例として出されるが、そもそも資産の貨幣換算の問題はピケティ
もわかっている(マルクスも全てが交換過程に入るわけではないと草稿で明示している)。
それよりも一番の問題は、仏英独(123,124,148頁)が農地を住宅等にして生産性を上げた
とピケティが考えているらしいことだ(230頁における農業社会における代替弾力性の低さの
指摘は危険だ。農業は必ずしも遅れた産業ではない)。

ワイン製造農家などは生産性を上げていると言えるのだから 、、、

今は先進国も農業を大事にしている(生産性も高めている)。詳述出来ないがモノカルチャーを
他国に強いるようでは資本税に意味はない。

クズネッツは農業から工業への移行を統計上重視していたのに、ピケティはこの課題を捨象す
るのが早すぎる気がする。だからr>gのテーゼに意味がなくなってしまう。ピケティ書の100
近い図表はもっと多角的に提示し得るのにそこが惜しい。柄谷行人(「ピケティなんてピカチ
ュウ」と酒の席で言っていたそうだ)が『トランスクリティーク』で述べたような「感性的
なデータ(物)を伴」った「未来の他者」(柄谷TC83頁)がピケティ書で機能していることは確
かなのだから*。


簡単に言うと、ピケティはマルクスよりサンデル以上にカントに近い。
彼の言う累進課税は統整的理念なのだ。そしてデータは柄谷行人が『トランスクリティーク』
で言うように物自体であり未来の他者なのだ(倫理はそこから生まれる)。

問題点を再度述べるなら、仏英独(123,124,148頁)が農地を住宅等にして生産性を上げたとピケティ
が考えているらしいことだ(230頁における農業社会における代替弾力性の低さの指摘は危険だ。
農業は必ずしも遅れた産業ではない)。ワイン製造農家などは生産性を上げている。
農業と工業の差異を捨象するのが早すぎると、r>gのテーゼの意味がなくなる。
今は先進国も農業を大事にしている(生産性も高めている)。だから日本の差し迫った課題はTPPだ。
詳述する余裕はないが、モノカルチャーを他国に強いるようでは資本税に意味はない。


参考:
NAMs出版プロジェクト: ルイスの「二重経済モデル」
http://nam-students.blogspot.jp/2015/02/blog-post_47.html
NAMs出版プロジェクト: 改変マルクス経済表:メモ
http://nam-students.blogspot.jp/2015/02/blog-post_3.html
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by yojisekimoto | 2015-02-07 00:49 | マルクス


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