同一性の問題。11/10柄谷行人長池講義メモ

会場の最寄り駅南大沢は、多摩ニュータウンの一画と言っていいだろう。
この近辺の地域通貨の会合に出席したことがあるので、人工的な町並みに戸惑ったが予想の範囲だった。
まず冒頭、高澤秀次氏の司会で、いとうせいこう氏からひと言あった。
柄谷氏の引っ越し、この近くの池に飛び込んだという浄瑠璃姫の話などだ。
この講義は、熊野大学の延長だと言う。。。

本題にはすぐ入った。
(以下メモです。ほとんど柄谷発言を自由間接話法で記述します。)

まず、カントの

仮象(Der Schein,seem)     現象(Erscheinung,seeming)     物自体

の構造が示され、

仮象と現象の間が重要との指摘があった。

ヒュームは同一性を疑ったが、仮象がなければ自己がないということになる。それは病気であり、単なる観念上の遊びではない。
(ラカン的に、想像的、象徴界、リアルと言い換えることも出来るが、カントからラカンを読むべきでありその方がより正しい。)

仮象の検証は、経験を全称命題によって証明することにつながる。
これはポパーの唱えた反証可能性と同じで、物自体という他者に開かれている点で、
現象から単称命題を導くハーバーマス(西欧中心主義)などより優れている。

国家や資本やネーションはこのような仮象であり、取り除くことができたとしても別のものが補完してしまう。
カントの指摘、超越論的仮象は必要だし、そのようなものとして国家を考えるべきである。

事前に考えたカントに対し、ヘーゲルは事後的に考えた。
これは現実追認に終わる。

キルケゴールはヘーゲル批判からキリストを考えた。

ちなみに進化論はライプニッツ、ヘーゲルから始まる。19世紀からではない。
カントの第三批判は生物学を扱っている、目的論だけではない。
(カントは、歴史に目的はないが、目的があるかのように看做していいと言っている。)

マルクスは国家、税制を捨象してそれ自体としての経済を考えた。
『世界共和国へ』ではそれと同じことを国家に対して行った。このようなことをした人は他にいない。
(マイケル・マンは唯一評価できる。)


B  A
  +
C  D

という4つの交換図(省略)の中で、

人類学はAを考え、カール・シュミットBを考え、マルクスはCを考えた。

日本のアナーキストはCを通過していないでDに行こうとした点が駄目。

すべてを同時に見たい。(現代の奴隷制に関して『ミナミの帝王』の債務奴隷の話。)

中国、ソ連は官僚制度を維持した。
マルクス主義が官僚化したのではなく、官僚がマルクスを利用した。

アメリカで講演した時東洋的でないといわれたが、そもそもマルクス、カントはコスモポリタンであり、西洋的ではない。
Dを「空(くう)」といったように神秘的、仏教的に言うことも出来るが、、、それもゼロの発見の問題として構造的、形式的に述べることができる。

(また、印象に残ったのは、自然と人間という関係は、人間と人間の関係に原型を持つという指摘だった。人間への搾取は自然への収奪に行き着くということでありその逆も言える。これは『トランスクリティーク』における物自体が他者であり、仮にデータであってもデータを提示する他者を考えればいいという指摘と対応している。カントとマルクスを横断する思考の成果としては、国家及び自己の超越論的仮象の問題以上にここに集約するという印象を持った。)

後半は、日本の歴史の問題になった(高澤秀次氏による戦後日本の『国家論』のレジュメ、レクチャーあり)。

孔子はアナキストだから始皇帝に弾圧された。
キリスト教と並行関係で国教化されたが、本来は両者ともアナーキーである。

フランクの西欧中心主義批判は10年遅い。もはや東洋中心主義を批判すべきである(笑)。

国家の同一性は、対外的に保証されるので、天皇制もそのために必要だった。
下からの運動も重要だが、上からの視点もなければならない。
(幕府と朝廷、源氏と平家、封建論争、国連に九条を採択させるべき等、その他の話題。)

最後は、いとうせいこう氏による冒頭の浄瑠璃姫の話につながりそうだったがここで時間切れだった。


印象に残ったのは同一性の問題だ。もちろん他者という構造の問題を経たあとに出てくる問題としての同一性である。


僕も会場にいた昔世話になった方々に挨拶しようとしたが、(あわせる顔がないので)出来なかったので、この同一性が対外的に必要になるという指摘が堪えた。

このような会を無料で行うのはレシプロシティー(reciprocity。互酬制という言葉を今回使わなかった)になってしまうので、できれば地域通貨払いで定期的に行って欲しいと思った。

ここ数年の柄谷氏の思考を圧縮した講義だが、参加者が皆理解を示していた点が印象的だった。
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by yojisekimoto | 2007-11-10 20:47 | 柄谷行人


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