11月23日(日) :「批評を批評する—美術と思想」
岡崎乾二郎、針生一郎、光田由里、柄谷行人 東京国立近代美術館地下1階講堂 ///////////////// まず、針生氏による50年代の回想があり、(光田氏作成の年譜を参照しながら)柄谷氏がそこに批評の全体性があった時代と補足した。その全体性は共産党が権威を持つ60年代まで続くが、それ以後は資本に対する免疫が欠け惨憺たる有様であるとする。 全体性の回復は柄谷氏の交換図に収斂する印象があった。といっても互酬性に話はかなり集中し、アソシエーションの事例を積極的に打ち出すまでにはいたらない。その全体性は数々のマイナスの事象から逆に浮き彫りになったと思う。岡崎氏による、公的なものは共有できないものから生まれる、美術館は価値判断せずあらゆるものを集め、名前を言ってから(図書館の閉棚式?)公開する等のアイデアが出て、美術のあり方自体に意識的であるべきことが確認できた。 最後に、村上隆に柄谷氏が触れ、普通のことをやっているだけで、外国から指摘されて大騒ぎするのはおかしいとした。 日本人は真善美の善の代わりに、手仕事を大事にしてきたが、村上氏もそれと同じように普通のことをやっているにすぎないのだと。 日本では「善の代わり」に美術があるという柄谷氏の指摘は面白く、(ハチソンと違い)スミスが経済的な事象の研究から道徳を説いたのに、いつのまにか美学に吸収実体化されたという定本第4巻冒頭(*)の指摘を連想させた。 真善美は意識化されないと日本化(=針生氏が指摘したようになんでもあるが特色も無い)する。世界は日本化しつつある。ただしこの状況は好ましくなく、美術は裏付けもなく存在するべきではない。共産党のようなものではもちろんだめだが、抑圧(抑圧が無ければ自由も無い、、、)する批評が必要だとした。 パネリストの年齢がそれぞれずれているので日本戦後美術史が立体的に理解できるきっかけが与えられたと思う。 ただ、たとえば 50年代は日本映画の黄金時代であり、こうした視点が加わると公-私の問題、前衛化-大衆化の問題等はもっと生産的なものであり得たと思う。 *定本第4集冒頭メモ: 真(国家)ー 美(ネーション) / 善(市民社会)←スミスの経済=道徳 真(悟性)ー 美(想像力で調停)→ヘーゲル、フィヒテなど実体化 / 善(感性) B ー A / C D 追記: 全体性というより自律的総合性がアソシエーションと言えるのではないか? そしてシンポジウムの参加者を交換図に当てはめるとまとめ役の光田由里女史がアソシエーションの位置にあると言える。 柄谷 針生 岡崎 光田
by yojisekimoto
| 2008-12-23 13:22
| 柄谷行人
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