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ゲゼル、自由貨幣についての説明

柄谷行人は『探究2』で、スピノザとマルクスをつなぐ認識のアポリアとして貨幣の無限性に着目していたが、むろんこれらは無際限なものではない。
以下、以前も日記で触れたゲゼルの『自然的経済秩序』(ぱる出版)より

なお、以下の(6)で触れられる「国家間の協調」に関しては、「エヴァ」という新たな通貨構想をゲゼルは持っていたようです(後日ご紹介いたします)。
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自由貨幣についての説明

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(1)1マルク紙幣、5マルク紙幣、10マルク紙幣、50マルク紙幣、100マルク紙幣、1000マルク紙幣の計六種類の紙幣の自由貨幣が発行される。このような紙幣の外に、四二〇頁の見本に示されているような小額印紙紙幣、つまり郵便切手と同じような印紙が発行される。
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この小額印紙紙幣は、必要升目を剥がすことによって1マルクまでの金額を支払うのに利用される。つまり、この小額印紙紙幣は、1ペニヒ、2ペニヒ、5ペニヒ、10ペニヒそして50ペニヒといった以前の小額貨幣の代わりをする。(それと同時にこの小額印紙紙幣の印紙を六種類の自由貨幣の週ごとの升目に貼ることによって、六種類の自由貨幣は額面通りの支払能力を保持することができる。〈(2)以下を見られたい。〉)またこの小額印紙紙幣は、公的機関での支払いに利用された後は、もはや流通に用いられず、新しい小額印紙紙幣に置換される。

(2)自由貨幣は過ごとに額面価格の1000分の1ずつ、すなわち一年に100分の5減価する。しかもその減価分は自由貨幣所有者の負担となる。それゆえ、彼はすでに言及した小額印紙紙幣を貼ることによっ紙幣の額面価格をたえず保持し続ける必要がある。たとえば四一九頁の100マルク紙幣の場合、八月一〇日までの升目にこのような印紙が全部貼られているならば、彼はそれを100マルクとして使用することができる。もちろん自由貨幣を受け取った人はそのような減価損失を防ぐために、今や可能なかぎり迅速に自由貨幣を他人に譲渡しようとする。なぜなら、彼が自分の無精のためにこの紙幣をたとえば九月一〇日まで保持し続けるならば、彼は5×10=50ペニヒを後で支払わなければならなくなるからである。つまりそうなった場合、彼は自分の小額印紙紙幣から5×10ペニヒの印紙を剥がして、それを100マルク紙幣に貼らなければならない羽目に陥るからである。したがって、自由貨幣のもとでの貨幣流通はすべての者がたえず現金払いをするとともに、債務の返済をすぐに行い、それでもなお貨幣が余った場合には、この余剰貨幣を急いで貯蓄銀行にもっていくという事態、そして貯蓄銀行はこの貯蓄の借手を探すために、必要ならば利子率の引下げをも検討するという事態を生むことになる。

(3)年末にすべての紙幣が新しい紙幣と交換される。

(4)自由貨幣導入の目的は、とりわけ商品に対する貨幣の優位性を打破することにある。このような貨幣の優位性は、例外なく、伝統的な貨幣が商品と比べて頑丈であるという長所から生まれたものである。労働生産物がその保存と維持に莫大な保管費ないし管理費 − それらは、商品が漸次的に減価していくのを緩慢にするけれども、完全に阻止することができないを必要とするのに対し、貨幣所有者は、貨幣素材(貴金属)が有するその物理的性質のために、そのような一切の減価損失や諸費用と無縁である。それゆえに、貨幣所有者(資本家) は、つねに取引に余裕をもつことができる。商品所有者がつねに取引を急ぐのに対し、貨幣所有者はじっと待つことができる。そのため、両者の価格交渉が不成立に終わるならば、その損害はつねに一方的に商品所有者、したがって、最終的には労働者によって負担されることになる。このような状況を資本家は利用して、商品所有者(労働者)に圧力を加え、商品所有者が労働生産物(労働力)を値引販売するよう強いてきたのである。  

(5)通貨局はこの紙幣の兌換を行わない。いったいどうしてなのか。貨幣はたえず使用され続けているために、いかなる究換の必要も生じないからである。それに対し、通貨局に義務づけられていることは、商品の平均価格を固定するために貨幣発行を市況に適応させるという任務である。したがって、物価はもっばら貨幣供給量に依存しているがゆえに通貨局は、商品価格が下落傾向にある場合にはより多くの貨幣を発行し、また反対に商品価格が騰貴傾向にある場合には貨幣を回収する。その際、通貨局によって発行された全貨幣量は即座に商品交換を遂行するというのが、この自由貨幣のもつ性質なのである。それゆえに、通貨局はこれまでのように国民通貨の安定を神秘的な、いわゆる金の「内的価値」に期待するという宿命論的考えにとらわれることもなければ、怠惰な休眠をむさぼりながら、詐欺師、投機家、高利貸が莫大な利益をあげるのを手を洪いて見ていることもなくなる。むしろ通貨局は、これらのことに目的意識的な強力な介入を行うことで、誠実な取引を行う人々をあらゆる危険から守るための機関になる。

(6)外国貿易の大きな意義を考慮するならば、われわれは、為替相場の固定化を実現するための国家間の協調を志向しなければならない。だが、このような協調が達成されるまでは、通貨行政は、貨幣発行の基準を国内価格の固定化に求めるのか、それとも為替相場の固定化に求めるのかという二者択一に直面することになる。

(7)自由貨幣と金属貨幣との両替は、金属貨幣所有者の全面的な自発性に任されるべきである。したがって、金と縁を切ることのできない者は、金を保持し続けてもかまわない。だが、以前の銀がそうであったように、金も自由な鋳造権を奪われへ法律的支払手段としての性格を失う。そして両替期限の終了後は、国庫や裁判所での金貨による支払いが拒否される。

(8)外国での支払いや外国による支払いのために利用されるのは、これまでと同様銀行や商人が外国に輸出した商品の代金ないし外国から輸入した商品の代金として振り出される為替手形である。それに対し、小額の場合には通例郵便為替が使用される。

(9)通貨局は、国内生産物の輸出代金として金をえた者、つまり輸入為替を調達することのできなかった輸出業者から金を購入する。逆に外国商品の輸入代金を支払うために金を利用している者、つまり輸出為替を調達できなかった輸入業者に対しては、通貨局は輸入に必要な金を販売する。その際の金価格は、(6)で未解決なままになっている問題の解決に依存している。

(10)貨幣価格が年五・二%減価するために、流通貨幣量は年々二、三億マルクずつ減少するはずである。だが、そうなったからといって貨幣不足の状態に陥ることはない。なぜなら、通貨局はこの不足額をたえず新発行の貨幣によって年々補充するからである。そしてこの補充は、通貨局にとって規則的な収入の確保を意味する。

(11)通貨行政が確保するこうした収入は、貨幣改革の意図せざる副産物であり、相対的に低い意義しかもたない。この貨幣収入の利用にかんしては、特別な法律的規定が設けられるべきである。


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続いて「自由貨幣の諸結果」も引用させていただきます(b-5の剰余価値への言及が重要だと思いますし、そこで触れられる「自由土地」に関してはゲゼルは「暫定的国家主義」という立場に立っていたと言えるでしょう)。
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 自由貨幣の諸結果

 (a) 商業サイド

(1)貨幣流通の継続性とその結果としての現金払いの増加傾向
(2)商品販売の大幅な増加
(3)商業恐慌や産業恐慌の廃絶
(4)商品価格の全般的下落と相場崩壊(恐慌)をたえず引き起こす諸原因の除去
(5)商品価格や貨幣価格の変動と結び付いたところの、全般的好景気あるいは不況などの景気変動(騰貴期間と下落期間)を引き起こす市況変動の阻止
(6)取引所投機や投機活動の廃絶
(7)取引全般の簡素化と低廉化
(8)ほとんどの小売機関の不要化とそれに対応した商業従業員の商品生産者への移行の増加
(9) これまで商品売上高の30、40%を構成していた莫大な商業経費の、商品売上高の約10〜15%への低下
(10)不合理な保護関税の廃止と自由貿易への移行               
(11)戦争の経済的原因の除去
(12)すべての国民にとって有益な世界貿易のための通貨協定の締結

 (b) 資本、労働そして貸金サイド

(1)貨幣の、利子を生むという性質の喪失とその商品や労働と同等の地位への下落
(2)採算性(剰余価値、収益性)を考慮する必要なしに、すべての余剰貨幣の、生産手段や住居などへの継続的な転換
(3)失業の即時的かつ永続的な除去と産業予備軍の完全な消滅
(4)資本利子(剰余価値) の漸次的低落傾向と世界貿易における自由貨幣導入の場合の、資本利子の漸次的かつ完全な消滅
(5)剰余価値の完全な廃絶にいたるような賃金の漸次的騰貴。だが、土地地代から生まれる剰余価値の廃絶には土地所有権の大改革(「自由地」) が必要となる。
(6)貯蓄の容易化。その理由は以下の三点である。第一に、これまで資本に支払われていた利子負担がなくなるという理由からである。第二に、財生産や財交換(商業)が今や経済不況によって妨げられたり中断されることなしに進展するという理由からである。第三に、以前には労働生産物の30~40%の比率であった商業経費が、今や三分の一に軽減されるという理由からである。
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by yojisekimoto | 2008-08-11 22:09 | 地域通貨