2013年11月23日 知の現在と未来:メモ

知の現在と未来【資本主義と国家の未来】 | 柄谷 行人 | 明治大学リバティアカデミー
https://academy.meiji.jp/course/detail/1340/
岩波書店 共催

柄谷講演(「資本主義に安楽死はない〜歴史的段階としての新自由主義」)は、
「帝国主義論」とも言える『世界史の構造』第三部(資本、近代世界システム)の駆け足の要約。
会場の後ろの方はその思考、発話の速度について行けてなかった。
(交換様式については最初に触れただけでほとんど追加説明していなかった。)
新しい観点としては、インドのヘゲモニー国家になる可能性に触れていたのが興味深かった。
ヘゲモニー国家は自由主義的で前ヘゲモニー国家と継承関係になければならないので、
次期ヘゲモニー国家に中国は難しいということらしい。
(資本主義世界が続いていればだが)インドが有力だそうだ。

主な参考文献:
モーゲンソー『国際政治』(帝国と帝国主義の差異。帝国主義を国家間の関係で見た?)
宇野弘蔵『経済政策論』(国家と資本とを分けた?)
ホブソン『帝国主義』(単純な内需拡大論だが、イギリスを見ていた点で、
ヒルファーディング『金融資本論』のドイツ、アメリカ偏重より評価出来るらしい)
デヴィッド・ハーヴェイ 『新自由主義』(柄谷は「中国的特色を持った新自由主義」という言葉を引用した)


柄谷の参加しなかった後半のシンポジウム登壇者の関心をあえて柄谷交換図で分類すると、

丸川|金子
ーー+ーー
堤 |國分

となるだろう。
柄谷講演がネグリ的?もしくはネットワーク型及び分散型対抗運動を帝国主義時代(今)の対抗運動の特徴だと
相対化したので、
マルクスに批判的で分散型社会を提唱する金子は最初から不機嫌だったようだ。
封建制の話、地域行政の話。TPPの話。国連の話、グローバル企業の話 etc.
(丸川の言う自主というよりも)主体、という概念が隠れた共通タームで、
未来にどういう価値観、理想やルール、コモンズを持つかべきは端緒だけで時間切れだった。

会場は大きく、木目調のよく出来たデザインだが省エネのせいなのか空調が悪く、
自分がいた場所は微妙な居心地だった。
各論者ともに日本以外の拠点があることが特徴なので遊動性がキーワードになったら
面白かったのに、と後から思った。
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# by yojisekimoto | 2013-11-23 23:16 | 柄谷行人

アリストテレスとハイデガーの倫理:メモ


アリストテレス『弁論術』第二巻(のうち第2~11章)は、情念論の原型である。アリストテレスは、

怒り2と 穏和3、
友愛と  憎しみ4、
恐れと  大胆さ5、
恥と   無恥6、
親切と  不親切7

という具合に、感情論を対になる感情の組み合わせで論じている。これらに続いて、

憐れみ8、義憤9、
妬み10、
競争心11

を取り上げている。
(参考:濱岡剛:不平等をめぐる感情)
http://c-faculty.chuo-u.ac.jp/~hamaoka/hamaoka/essays/indignation&envy.pdf


以下、藤江泰男氏作成、
         〈アリストテレスの中庸の徳・一覧表 〉

 項           不足         中間性       過剰
                        ・中庸 
恐れと平静       むこうみず      勇気        臆病
快楽と苦痛(自分)   無感覚        節制        ふしだら
財貨の供与と取得(小) さもしさ      (もの惜しみしない) しまりなさ
                       心の広さ 
財貨の供与と取得(大) 卑小         豪気        俗悪と陳腐
名誉と不名誉(大)   卑屈         高邁        虚栄
名誉と不名誉(小)   功名心のない人    無名称       功名心のある人
怒り          腑抜け        温和        怒りっぽい
言葉と行為(真)    おとぼけ       真実        はったり
言葉と行為・遊び(快) 野暮         機知        道化
言葉と行為・生活(快) つむじ曲り・気難しや 情愛        御機嫌取り・胡麻すり
情           恥知らず       恥を知る      引っ込み思案
苦痛と快楽(他人)   人の悪い喜び     義憤        嫉み
正義(第5巻)                全般的・特殊的正義

『ニコマコス倫理学』II-7 から作成。訳語も藤江泰男氏のもの。
http://ir.lib.sugiyama-u.ac.jp/dspace/handle/123456789/331

「徳とは選択にかかわる性格の状態(ヘクシス・プロアイレティケー)なのであり,そ
の本質はわれわれとの関係における中庸(メソテース)なのである,ということになる
が,その場合の中庸とは,道理(ロゴス)によって,しかも思慮ある人が中庸を規定す
るのに用いるであろうような道理によって規定されたものなのである 。」
(『ニコマコス倫理学』,II-6, 1106b–1107a. 40)



以下、村田久行『ケアの思想と対人援助』 65頁より、
キューブラー・ロス『死ぬ瞬間("Stafes" of Dying)』におけるチャートとの比較。
http://yojiseki.exblog.jp/7748670/
              死の先駆に関しては『存在と時間』#49-53参照。

    "Stafes" of Dyingと本来的な自己存在への移行表

 Stages    非 本 来 的       本 来 的
   of 
  Dying   空談 好奇心 曖昧性   沈黙 内省 決意性
   否認      @  @  @
   怒り      @  @  @
   取り引き       @  @      @  @
   抑鬱            @      @  @
   受容                   @  @  @

  『死ぬ瞬間』       『 存 在 と 時 間 』
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# by yojisekimoto | 2013-11-16 14:12 | ハイデガー

インスクリプト『柳田国男論』

インスクリプト『柳田国男論』扉には、『一九七二年 作家の肖像』(佐伯 剛正)
http://www.amazon.co.jp/dp/4860293541/
に収めれた柄谷行人の若かりし日の写真が2枚掲載されている。
表紙の港千尋による写真(縄文的イメージ?)が相対化されていると言えなくもない。

内容に関して言うと驚くべきことに、1974年の「柳田国男試論」終盤で柄谷行人はすでに柳田国男の旅行記における移動の重要性に着目していた。「島の文化史上の意義」もすでに指摘されている(253頁)。ただし、この柳田国男の旅行は国家を前提にしたもう一つのノマドロジーの側面も多少ある(むろん当時の柳田国男の「現実の諸条件」における努力を全否定はできないが)。
その他、柳田国男が宣長より荻生徂徠に近いという指摘は面白い*。
また、折口信夫への言及がその論理的一貫性を明確にしていて興味深い(これは他でも書いていたはずだが)。

ただ、 大抵の柳田国男論に乗り切れない自分の意見を述べると、

柳田国男は、

本来の日本=今の日本-西欧文化-江戸-仏教-中国-アイヌ

と考えたようだが、江戸を引いたのが余計だった、と思う。
この明治維新以降の政府官僚だったことによるバイアス(江戸時代への対抗心)があちこちで齟齬をきたす要因になっている**。
例えば協同組合の原型であり得た報徳社を柳田国男は必要以上に批判しすぎた。

信用制度が弱いのは当たり前だし、それこそ明治以降の近代国家において政府官僚***がやるべき仕事なのに。
これで日本の協同組合運動は断ち切られた(オーバーな言い方かも知れないが)。
端的に言えば自然主義****から始まった柳田国男の仕事は一からやり直す必要があるのだ。

  ______


 最新の「文学界」連載の柳田国男論(『山人と柳田国男』文春新書(2014年刊行予定))では新国学は宣長を継ぐものとされる。

**
 それに対して、多角的な視点が熊楠にはあったし、他者からの視点が折口信夫にはあった。

***
 社倉は遊動性を確保した貯蓄ということなのだろうが、それでも論理的矛盾は消えない。国家は両義的になる。柳田国男はそうした国家の両義性から逃避している。
柄谷はat18でそうした柳田国男を擁護しているが、これはプルードン批判したマルクスを擁護するのと同じ構図だ。

****
 自然主義はナチュラリズムとして考えると良い。超-に対してただの自然主義。その意味ではスピノザも自然主義と言える。
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# by yojisekimoto | 2013-11-11 02:47 | 柄谷行人

アリストテレスの体系

 ___アリストテレスの著作__________________
|形|             | |         オ   |
|而|『形而上学12』     |論|『カテゴリー論1』ル   |
|上|             | |『命題論1』   ガ   |
|学|             |理|『分析論前書1』 ノ 道 |
|_|_____________| |『分析論後書1』 ン=具 |
| |『自然学3』       |学|『トピカ2』   所   |
| |  一部が『天について4』| |『詭弁論駁論2』 収   |
|自|「生成消滅論4」     |_|_____________|
| |「気象論5」       | |『ニコマコス倫理学13』 |
| |_____________|実|『マグナ・モラリア14』@|
| |『動物誌7,8』     | |『エウデモス倫理学14』 |
|然|『動物部分論8動物運動論9|践|『美徳と悪徳について14』|
| | 動物進行論9』     | |_____________|
| |『動物発生論9』他    |哲|『アテナイ人の国制17』 |
| |_____________| |『政治学15』      |
|学|『霊魂論6』       |学|『弁論術16』      |
| |「夢について6」     | |             |
| |「呼吸について6」他   | |『詩学17』       |
|_|_____________|_|_____________|
  (『イラスト西洋哲学史 上』127頁)
  @『マグナ・モラリア』=『大道徳学』

全角数字は旧版『アリストテレス全集』(1971岩波書店)巻数。
形而上学、カテゴリー論の位置づけが重要なので、ヘーゲルよりもカント体系と対比するとよい。
形而上学は自然学の次にくるというより前にあると考える方がいい。四元素という第一質料の前に個々の個体という第一実体についての考察があるのだ。論理学はそうした思考の技術的な側面をカバーする。

  形而上学
    |\
    | \論理学
    | / |
    |/  |
  自然学 実践哲学
      制作

 参考:http://philosophy.hix05.com/Aristotle/aristotle02.metaphisics.html

第一質料(四元素)   第二実体(類、種)     
第二質料        第一実体(個々の個体)   

変則的だが図は右が思惟、左が延長と考えてもいい。

      神
      形相
    質料
     /\
   \/  \/
   /\  /\
     \/
     実体
  
    形而上学
  \  /\  /
  自然学  論理学
   /\  /\
 (医学)\/政治学、詩学
  
再度強調すると、結論としては形而上学=メタ(言語の意味は「後」だが)フィジカルなものを先におくべきだ。
そこだけハイデガーは正しい。ヘーゲル体系も「有論」が先にある。

個々の概念としての個体〜現象(形態)〜が第一実体であることを忘れない限りではあるが。


参考、
アリストテレスの存在論:(「銀杯」を例にした。)

         2.ヒュレー hyle 質料(素材 )「銀」
           |
           |           ヒュポケイメノン基体(基に措かれたもの)  
      _____|_____            hypokeimenon
     |     |     |     ウーシア  ousia  実体(本質存在)
     |     |     |___1.エイドス  eidos  形相(概念)「銀杯」 
     |    /|     |     モルフェー morphe 形 (形式) 
     |   / |     |       
      \_/_ | ___/      
       /  |||
4.テロス /   |||
  telos  / | \   
  目的因  _/  |  \_ 
  「飲む」|____|____|
           |
         3.アルケー arche 始動因「職人」

図は以下を改変
http://www2.hawaii.edu/~zuern/demo/heidegger/chalice.gif
http://www2.hawaii.edu/~zuern/demo/heidegger/guide2.html
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# by yojisekimoto | 2013-11-03 22:35 | 研究