書評:
坂本竜馬 (PHP文庫)
黒鉄 ヒロシ著
龍馬関連で一冊選べと言われれば、書簡集を選ぶべきだろうが、初心者には劇画である本書も棄てがたい。幕末の雰囲気がよく出ているからだ。
著者の資質的には新撰組の方があっているのだが、以下の表紙のカバー裏の言葉が「自由」を強調しがちな後世の研究家に、平等(龍馬の言葉では「均(なら)し」)の重要さを気づかせてくれる(自由を強調することは龍馬の活動が自由民権運動に繋がることからも間違いではないが)。
「平等」は、当時ではあたりまえでなかったが故に重要だったし、国に殉じる覚悟を持った龍馬が「自由」よりも「平等」を重視していたであろうことは頷ける。龍馬の経済活動を通じた革命志向に関して認識するには、他の書籍が必要になるが、このカバーの言葉だけでも本書は価値がある。
「龍馬さんはね、そりゃ怖かった、ト。
『龍馬さんが来た!』と言うだけで泣
いていた子は泣き止み、外で遊んで
いた子は家に逃げ帰った、 ト。ある
日、龍馬さんが通りかかって『いず
れ均(なら)しの世が来るぜよ』と、ひひ
ばあちゃんに言うた、ト」
祖母が語ってくれた、曾々祖母(ひいばあ)さんの
目撃談である。曾々祖母さんに、何の
つもりで龍馬さんがそんなことを告げ
たのであろう?
僕は土佐の産である。幕末への僕の
扉の前には、龍馬さんが立っていた。
龍馬さんは笑いながら、扉を開けて
くれたーー。 著者