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空海による「般若心経」読解(『般若心経秘鍵』):メモその3

空海(「般若心経秘鍵」角川文庫及び、ちくま文庫の空海コレクション2所収)によれば、大般若経(というより真言)の心髄を表した般若心経、全体は5つに分かれる。
空海の文章を読むと、教えの立場からの喜び、7つの宗派への分類☆☆☆☆、空の教義以上に真言を強調していることが印象に残り、全体的には、情熱的かつ緻密である。般若心経を読むものにとって必読書ではないか、と思う。
以下、前掲ちくま文庫345-6頁及び松長有慶著『空海、般若心経の秘密を読み解く』137-8頁より(一部改変)。


題目
   仏説摩訶般若波羅蜜多心経
        
          __因__ ___行____ _時_ ___証___ __入__
一 人法総通分___観自在菩薩 行深般若波羅蜜多  時、 照見五蘊*皆空、度一切苦厄。
        (人と法に関する総説。因・行・証・入・時)

二 分別諸乗分 (声聞と縁覚を含め、7つの宗派の教えが説かれているという。真言は四、五へ)
   |___健(華厳、普賢A)
   |      舎利子。色*不異空、空不異色、色即是空、空即是色。  ☆
   |      受想行識* 亦復如是。
   |___絶(三論、文殊B)                          |        
   |      舎利子。是諸法空相、不生不滅、不垢不浄、不増不減。       |
   |___相(法相、弥勒C)                        ☆☆|_______
   |      是故空中、無色、無受・想・行・識*、無眼・耳・鼻・舌・身・意 ||       |
   |      無色・声・香・味・触・法。無眼界、乃至、無意識界。      ||       |
   |___二(二乗、声聞と縁覚)                                |
   |      無無明@、亦無無明尽、乃至、無老死、亦無老死尽。(縁覚=独覚)_______  |
   |      無苦・集・滅・道。☆☆☆      (声聞=教えを受けた悟り)_____  | |
   |___一(天台、観自在菩薩D)                           | | |
          無智亦無得。以無所得故、                        | | |
                                              | | |
          _人__ __以下、法__ (修行の結果の説明)            | | |
               ___因と行__                       | | |
三 行人得徳分___菩提薩埵、依般若波羅蜜多故、           (因と行)      | | |
          __________入__________               | | |
          心無礙、無礙故、無有恐怖、遠離一切顛倒夢想、              | | |
          __________入_______                  | | |
          究竟涅槃。三世諸仏、依般若波羅蜜多故、      (涅槃に入ること)  | | |
          ____証_____                          | | |
          得阿耨多羅三藐三菩提。              (証)        | | |
                                              | | |
四 総帰持明分___故知、般若波羅蜜多、    (名体用、すべてが真言に帰することの説明) | | |
          是大神呪、  (声聞の真言)______________________| | |
          是大明呪、  (縁覚の真言)____________________|___| |
          是無上呪、  (大乗の真言)________________  | |     |
          是無等等呪、 (秘蔵の真言)(~以上、名)_______  | | |     |
          能除一切苦、            (用)       | | | |     |
          真実不虚。             (体)       | | | |     |
                                      | | | |     |
五 秘蔵真言分___故説、般若波羅蜜多呪。即説呪曰、            | | | |     |
        (真言~ここも5分割出来る~の解説)            | | | |     |
          羯諦          (1教えを聞いての悟り)____|_|_|_|     |
          羯諦          (2独自の悟り)________|_|_|       |
          波羅羯諦        (3法相、三論等修業の結果)__|_|_________|
          波羅僧羯諦       (4真言等修行の結果の結果)__|
          菩提薩婆訶       (5究極的悟りに入る意義)
          般若心経。


黒澤明『八月のラプソディー』にも般若心経が出て来る。
(三の行人得徳分から。五の冒頭までいったあと、三の途中までもどり、真言は7回繰り返す。単に時間合わせのサウンド処理の結果かも知れない。なお倶会一処という言葉が出て来るが、これは阿弥陀経の言葉で浄土真宗系のものである。)

参考:
 _________________        
|    中 台 八 葉 院    |
|      _宝幢__      |      
|  C弥勒|(与願印)|普賢A  |   
|   /_|__大__|_\   |   
|(触地印)|  日  |  |  |  
|天鼓雷音 |  如  | 開敷華王|   
|  |  |  来  |(施無畏印)      
|  |__|(禅定印)|__|  |
|  D観音|(阿弥陀)|文殊B  |
|    \|_無量寿_|/    |
|      (禅定印)      |
|_________________| 
      胎蔵曼荼羅中心部

普賢、文殊、弥勒、観音(観自在菩薩)は、胎蔵曼荼羅の中心部を占める。

 弥勒  (与願印)普賢          
(触地印)      (施無畏印)
  観自在(禅定印)  文殊
  

華厳宗はライプニッツに近いと言われる。
三論宗は龍樹の教えを集大成したもの。
法相宗は十二支因をもっとも意識づける。大乗の代表例。
二乗はそれぞれ小乗である。
天台宗は『法華経』を典拠とし、最澄が開祖である。


  ___    ___
 |   |  |   |
 | 色 |  | 空 | 
 |___|  |___|
   ___空
色_|_ 3|
| |2| |  
|1|_|_|
|___| 

三つの領域に区分される。
「色であり、かつ空でない」領域1、
「空であり、かつ色ではない」領域2、
「色であり、かつ空である」領域3の三者である。
この段階でさらに色と空は異ならないという規定を適用すると、前二者が否定されてしまい、
「色であり、かつ空である」だけが残る。
ここまでくると「色即是空 空即是色」と実質的に同じ意味になるだろう。
したがって、「色不異空 空不異色」は、ここまで両者を一体化させるために両者の観念を
重ね合わせようとする働きをしていたのである。

有の極端(=対象の実体化)でもなく無の極端(=虚無)でもない中道をゆくのが仏教である。

これまでの経文の意味を一括して図示すると以下のような図になるだろう。
         ___
        | 識 |
    ____|___|____
 __|_   |___|   _|__
|  | |         | |  |
| 色| |    空    | |行 |
|__|_|         |_|__|
   |  ___   ___  |
   |_|___|_|___|_|
     | 受 | | 想 |
     |___| |___|

あえて集合論的に表現するならば、「人間=空性∩(色∪受∪想∪行∪識)」と表記されるだろう。
http://kongou-koji.tea-nifty.com/blog/2008/02/9_7cc1.html
http://kongou-koji.tea-nifty.com/blog/2009/12/12-2f05.html


五蘊は次の5種である。
色蘊(しきうん) - 人間の肉体を意味したが、後にはすべての物質も含んで言われるようになった。
受蘊(じゅうん、vedanaa) - 感受作用  
想蘊(そううん、saMjJaa) - 表象作用
行蘊(ぎょううん、saMskaara) - 意志作用
識蘊(しきうん、vijJaana) - 認識作用  
(般若心経には、「五蘊皆空」と五蘊のうちの頭文字からなる「受想行識」という文言が含まれている。)

         識
        /\
    ___/行|\______
   /  / 想| \    /
  /  /__受___\  /
 /            /
/______色_____/
http://www.sets.ne.jp/~zenhomepage/gensi1.html

 ________________________
|色______受(想行)__識_______五蘊|
|色(しき) |眼(げん)|眼識(げんしき)|   ☆☆
|声(しょう)|耳(に) |耳識(にしき) |
|香(こう) |鼻(び) |鼻識(びしき) |
|味(み)  |舌(ぜつ)|舌識(ぜっしき)|
|触(そく) |身(しん)|身識(しんしき)|
|法(ほう)_|意(い)_|意識(いしき)_|
|六根____|六境、六処|六識______|
|____十二処_____|________|
|_________十八界_________|

度=克服する

      触______受_____愛
      /           /\  
     /       天   /  \
  六処/  阿        /    \取 
   /  修    ____/   人  \
  /  羅    /    \       \
名色_______/ 蛇  雄鶏\_______\有
 \       \   豚  /       /
  \   餓   \____/    畜  /
   \   鬼  /    \   生  /
   識\    /  地獄  \    /生   
     \  /        \  /
      \/__________\/
      行     無明     老死

    六道輪廻図(付:十二支縁起)

六道輪廻図(カラー)
http://www.thangka-iori.net/rokudou.html
http://www.thangka-iori.net/photo/rokudou3.jpg

円の上に阿修羅、天、人(この図では阿修羅と天はまとまって描かれている)という三善趣=幸福な転生が、
下に餓鬼、地獄、畜生という三悪趣=不幸な転生が描かれている。
上の図では欲望(雄鶏)、怒り(蛇)、愚かさ(豚)という三大煩悩=三毒が円の中心に描かれ、
外円には下から時計回りに十二支縁起(因果の系列)が描かれる。以下詳細。

最初は無知(無明)があり、
無知によって行為(行)が生じ、
行為によって意識(識)が生じ、
意識によって名称と色彩(名色)が生じ、
名称と色彩によって六つの感覚領域(六処)が生じ、
六つの感覚領域によって接触(触)が生じ、
接触によって感受作用(受)が生じ、
感受作用によって欲求(愛)が生じ、
欲求によって執着(取)が生じ、
執着によって生存と呼ばれる成熟した業(有)が生じ、
生存によって誕生(生)が生じ、
誕生によって老衰と死(老死)が生じる。

☆☆☆
        人生の課題(四諦)
問題は何か     苦
原因を分析する   集
原因を取り除こう  滅
問題解決の実践方法 道=八正道
            ↓↑
      正見、正思惟、正語、正業、
      正命、正精進、正念、正定


講談社新書『東洋の合理思想』では(華厳とライプニッツの類似性など)論理学的な背景がわかる。
なお、三論宗は中観派、法相宗は唯識派とも呼ぶが、前者は中国式、後者はインド式の呼び方である。


追記:
「色不異空、空不異色、色即是空、空即是色。 受想行識、亦復如是。」の解説。

   /\       /\
  /  \     /  \
 / 色  \   /  空 \
/      \ /      \
\      / \      /
 \    /   \    /
  \  /     \  /
   \/       \/

   色\  /空
  /  \/  \
 /   /\   \
/  1/2 \3  \
\   \  /   /
 \   \/   /
  \  /\  /
   \/  \/ 

三つの領域に区分される。
「色であり、かつ空でない」領域1、
「空であり、かつ色ではない」領域2、
「色であり、かつ空である」領域3の三者である。
この段階でさらに色と空は異ならないという規定を適用すると、前二者が否定されてしまい、
「色であり、かつ空である」だけが残る。
ここまでくると「色即是空 空即是色」と実質的に同じ意味になるだろう。
したがって、「色不異空 空不異色」は、ここまで両者を一体化させるために両者の観念を
重ね合わせようとする働きをしていたのである。


有の極端(=対象の実体化)でもなく無の極端(=虚無)でもない中道をゆくのが仏教である。

       ______
      |  識   |
      |  /\  |
      |_/__\_|
       /    \
  /\  /      \  /\
 /  \/        \/  \
/ 色 /\   空    /\ 行 \
\   \/        \/   /
 \  /\        /\  /
  \/ _\_    _/_ \/
    |  \|  |/  |
    | 受 \  / 想 |
    |   |\/|   |
    |___|  |___|


あえて集合論的に表現するならば、「人間=空性∩(色∪受∪想∪行∪識)」と表記されるだろう。
http://kongou-koji.tea-nifty.com/blog/2008/02/9_7cc1.html
http://kongou-koji.tea-nifty.com/blog/2009/12/12-2f05.html

☆☆☆☆
 ____7
|真言密教|_1
|  中 華厳|_6 
|  国   天台|_2 
|大乗 イン   三論|_3
|____ド_____法相|_4
|小乗          縁覚|_5
|______________声聞|_
|外道              道教|_
|                  儒教|_
|____空海『秘蔵法鑰』________野蛮|

空海『秘蔵法鑰』(角川文庫)参照

        空
 /\ 三論集/\天台宗 ||
 ||   / 理\   \/
  法相宗/    \華厳宗 
    /      \
倶舍宗/        \真言宗
  色、事       色、事

立川武蔵『空の思想史』313頁参照



因・行・証・入・時

__因__ ___行____ _時_ __証___ __入__
観自在菩薩 行深般若波羅蜜多  時、 照見五蘊皆空、度一切苦厄



題目
   仏説摩訶般若波羅蜜多心経
        
          __因__ ___行____ _時_ ___証___ __入__
一 人法総通分___観自在菩薩 行深般若波羅蜜多  時、 照見五蘊*皆空、度一切苦厄。
        (人と法に関する総説。因・行・証・入・時)

二 分別諸乗分 (声聞と縁覚を含め、7つの宗派の教えが説かれているという。真言は四、五へ)
   |___健(華厳、普賢A)
   |      舎利子。色*不異空、空不異色、色即是空、空即是色。  ☆
   |      受想行識* 亦復如是。
   |___絶(三論、文殊B)                          |        
   |      舎利子。是諸法空相、不生不滅、不垢不浄、不増不減。       |
   |___相(法相、弥勒C)                        ☆☆|_______
   |      是故空中、無色、無受・想・行・識*、無眼・耳・鼻・舌・身・意 ||       |
   |      無色・声・香・味・触・法。無眼界、乃至、無意識界。      ||       |
   |___二(二乗、声聞と縁覚)                                |
   |      無無明@、亦無無明尽、乃至、無老死、亦無老死尽。(縁覚=独覚)_______  |
   |      無苦・集・滅・道。☆☆☆      (声聞=教えを受けた悟り)_____  | |
   |___一(天台、観自在菩薩D)                           | | |
          無智亦無得。以無所得故、                        | | |
                                              | | |
          _人__ __以下、法__ (修行の結果の説明)            | | |
               ___因と行__                       | | |
三 行人得徳分___菩提薩埵、依般若波羅蜜多故、           (因と行)      | | |
          __________入__________               | | |
          心無礙、無礙故、無有恐怖、遠離一切顛倒夢想、              | | |
          __________入_______                  | | |
          究竟涅槃。三世諸仏、依般若波羅蜜多故、      (涅槃に入ること)  | | |
          ____証_____                          | | |
          得阿耨多羅三藐三菩提。              (証)        | | |
                                              | | |
四 総帰持明分___故知、般若波羅蜜多、    (名体用、すべてが真言に帰することの説明) | | |
          是大神呪、  (声聞の真言)______________________| | |
          是大明呪、  (縁覚の真言)____________________|___| |
          是無上呪、  (大乗の真言)________________  | |     |
          是無等等呪、 (秘蔵の真言)(~以上、名)_______  | | |     |
          能除一切苦、            (用)       | | | |     |
          真実不虚。             (体)       | | | |     |
                                      | | | |     |
五 秘蔵真言分___故説、般若波羅蜜多呪。即説呪曰、            | | | |     |
        (真言~ここも5分割出来る~の解説)            | | | |     |
          羯諦          (1教えを聞いての悟り)____|_|_|_|     |
          羯諦          (2独自の悟り)________|_|_|       |
          波羅羯諦        (3法相、三論等修業の結果)__|_|_________|
          波羅僧羯諦       (4真言等修行の結果の結果)__|
          菩提薩婆訶       (5究極的悟りに入る意義)
          般若心経。

by yojisekimoto | 2011-10-08 17:00 | 仏教


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