インスクリプト『柳田国男論』扉には、『一九七二年 作家の肖像』(佐伯 剛正)
http://www.amazon.co.jp/dp/4860293541/ に収めれた柄谷行人の若かりし日の写真が2枚掲載されている。 表紙の港千尋による写真(縄文的イメージ?)が相対化されていると言えなくもない。 内容に関して言うと驚くべきことに、1974年の「柳田国男試論」終盤で柄谷行人はすでに柳田国男の旅行記における移動の重要性に着目していた。「島の文化史上の意義」もすでに指摘されている(253頁)。ただし、この柳田国男の旅行は国家を前提にしたもう一つのノマドロジーの側面も多少ある(むろん当時の柳田国男の「現実の諸条件」における努力を全否定はできないが)。 その他、柳田国男が宣長より荻生徂徠に近いという指摘は面白い*。 また、折口信夫への言及がその論理的一貫性を明確にしていて興味深い(これは他でも書いていたはずだが)。 ただ、 大抵の柳田国男論に乗り切れない自分の意見を述べると、 柳田国男は、 本来の日本=今の日本-西欧文化-江戸-仏教-中国-アイヌ と考えたようだが、江戸を引いたのが余計だった、と思う。 この明治維新以降の政府官僚だったことによるバイアス(江戸時代への対抗心)があちこちで齟齬をきたす要因になっている**。 例えば協同組合の原型であり得た報徳社を柳田国男は必要以上に批判しすぎた。 信用制度が弱いのは当たり前だし、それこそ明治以降の近代国家において政府官僚***がやるべき仕事なのに。 これで日本の協同組合運動は断ち切られた(オーバーな言い方かも知れないが)。 端的に言えば自然主義****から始まった柳田国男の仕事は一からやり直す必要があるのだ。 ______ * 最新の「文学界」連載の柳田国男論(『山人と柳田国男』文春新書(2014年刊行予定))では新国学は宣長を継ぐものとされる。 ** それに対して、多角的な視点が熊楠にはあったし、他者からの視点が折口信夫にはあった。 *** 社倉は遊動性を確保した貯蓄ということなのだろうが、それでも論理的矛盾は消えない。国家は両義的になる。柳田国男はそうした国家の両義性から逃避している。 柄谷はat18でそうした柳田国男を擁護しているが、これはプルードン批判したマルクスを擁護するのと同じ構図だ。 **** 自然主義はナチュラリズムとして考えると良い。超-に対してただの自然主義。その意味ではスピノザも自然主義と言える。
by yojisekimoto
| 2013-11-11 02:47
| 柄谷行人
|
プロフィール
横浜在住。ナマケモノ倶楽部、TCX会員。参加している地域通貨は、Q(ID名は6463749)、三鷹seeds、鴨川安房マネー、多摩COMO、千姫プロジェクト(IDは「ヨウジ」)、千葉ピーナッツ、ccsp各種(IDはyojisekimoto)です。
フォロー中のブログ
カテゴリ
全体 研究 歌詞 書評 日記 柄谷行人 歴史 ヘーゲル マルクス ハイデガー 地域通貨 環境問題 プルードン パーソンズ フロイト くじ引き カント 横浜 スピノザ ライプニッツ ニーチェ 映画 SBS 旅 老子 スポーツ 数学 ディラン 黒澤明 音楽 インド哲学 文学 科学 心理学 ドゥルーズ 原発 仏教 百人一首 孔子 哲学 未分類 以前の記事
2016年 10月 2016年 03月 2015年 05月 2015年 03月 2015年 02月 2015年 01月 2014年 11月 2014年 10月 2014年 06月 2014年 05月 2014年 01月 2013年 12月 2013年 11月 2013年 10月 2013年 09月 2013年 08月 2013年 07月 2013年 06月 2013年 05月 2013年 04月 2013年 02月 2013年 01月 2012年 12月 2012年 11月 2012年 10月 2012年 09月 2012年 08月 2012年 07月 2012年 05月 2012年 04月 2012年 03月 2012年 02月 2012年 01月 2011年 12月 2011年 11月 2011年 10月 2011年 09月 2011年 08月 2011年 07月 2011年 06月 2011年 05月 2011年 04月 2011年 03月 2011年 02月 2011年 01月 2010年 12月 2010年 11月 2010年 10月 2010年 09月 2010年 08月 2010年 07月 2010年 06月 2010年 05月 2010年 04月 2010年 03月 2010年 02月 2010年 01月 2009年 12月 2009年 11月 2009年 10月 2009年 09月 2009年 08月 2009年 06月 2009年 05月 2009年 04月 2009年 03月 2009年 02月 2009年 01月 2008年 12月 2008年 11月 2008年 10月 2008年 09月 2008年 08月 2008年 07月 2008年 06月 2008年 05月 2008年 04月 2008年 03月 2008年 02月 2008年 01月 2007年 12月 2007年 11月 2007年 10月 2007年 09月 2007年 08月 2007年 07月 2007年 06月 2007年 05月 2007年 04月 2007年 03月 2007年 02月 2007年 01月 2006年 12月 2006年 11月 2006年 10月 2006年 09月 2006年 08月 2006年 06月 2006年 05月 2006年 04月 2006年 03月 2006年 02月 2006年 01月 2005年 12月 2005年 09月 2005年 08月 2005年 06月 2005年 05月 2005年 04月 2005年 03月 2005年 02月 2005年 01月 2004年 06月 検索
タグ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧
|
ファン申請 |
||