ロゴス、言葉、理義、集め置き(p20)
モイラ、運命、送り定めながら配分する(p80) アレーテイア、真理、隠れなさ(p90) ΛΟΓΟΣ,Λόγος, logos. ΜΟΙΡΑ,μοίρα, moira. ΑΛΗΘΕΙΑ , αλήθεια, aletheia. ハイデガーの『ロゴス・モイラ・アレーテイア』(言葉・運命・真理)は『アナクシマンドロスの言葉』や『形而上学入門』と同じくらい重要なテキストであり、書名となった三つのギリシア語しか説明はしていないが一種のハイデガー用語辞典のおもむきがある。 まず、ヘラクレイトスは言う。「お前たちが、私にではなく、理義=ロゴスに聞いて、同じ理義=ロゴスで<全ては一である>と言うのが賢いことだ。(断片50)」(p6)。 「ロゴス」は通常、「言葉」あるいは「理義」と訳され、「集め置き」(p20)という語源がある。ラカンはこのロゴスの部分を仏訳している(後述)。 また、パルメニデスは言う。「思考することと、あるがあるという思想とは同じである(略)というのもモイラがそれを全体であり不同であることに結びつけているからである。(断片三及び八)」(p46)。 モイラは運命という意味で、「送り定めながら配分する」(p80)と言う語源がある。 さらに、ヘラクレイトスは暗い人でなく明るい人であるとハイデガーは指摘する(p88)。「決して没しないものを前にして、人はいかにして自分を隠すことができようか(断片16)」(p91)という言葉の内容が示すように、ヘラクレイトスが「アレーテイア」を志向したからである。「アレーテイア」はギリシアで言う「真理」であり、「隠れなさ」(p90)という語源がある。ただし、このような語源を指摘してもヘラクレイトスには近づき得ないとハイデガーは指摘する。ギリシア人が書いたテクストの中に身を置き、存在と存在者との差異を忘却から救う必要があるということだろう。 ラカンは前半三分の一のロゴスの部分だけ訳したが、これではシニフィアンの連鎖の優位さは指摘できても、ギリシア哲学の豊かさは体感できない。 理性(ロゴス)で集め置いた、隠れることない真理(アレーテイア)が、人びとに運命として配分(モイラ)されることが隠蔽されてしまうからである。ラカンの対象aは「隠れなさ」において「アレーテイア」を表象していると言えるが、それでも東浩紀の言う郵便的なもの、つまりここでは「モイラ」(運命)への視点が足りないのである。 (頁数はハイデッガー選集33巻『ロゴス・モイラ・アレーテイア』理想社より) これらの言葉はハイデガーが示唆するように同じものを指し示していると考えることも出来るが、そうするとアリストテレスの4つの要因ともつながるような気がする。 アリストテレスの場合は銀杯を例に挙げることができたが、上記の場合はもう少し抽象的になる。 ![]() 参考サイト: 『エクリ』を読む 掲示板 http://www1.ezbbs.net/cgi/bbs?id=jwetton&dd=06&p=1 ラカンによるハイデガーのロゴス論翻訳(仏語)はここにあります。 http://www.ecole-lacanienne.net/documents/1956-00-00b.doc 以下はギリシア文字もつぶれていない。 http://www.scribd.com/doc/76088309/Traduction-de-«-Logos-»-de-Martin-Heidegger-par-Jacques-Lacan 日本語解説は以下が詳しい。 http://www.h6.dion.ne.jp/~yukineko/logos.html 「ハイデッガーはあくまで存在を、自分の外にある存在そのものではなく、それを自分の目の前に取り集める我々の(つまり現存在の)行為のうちで解釈する。 それ(現存在)をいわゆる生物学的な存在としての「人間」と区別することで、その「取り集める」という行為を、人間の遺伝的で身体的な性質と切り離し、何らかの超越的なものとして解釈する。 これによって、ロゴスは、人間の生存と子孫繁栄の欲求によって行われていることを押し隠したまま、何か崇高な行為として特権化される。 そして、このようなロゴスはアレーテイア(真理)と同一視される。 「Ἀληθείηとλόγοςは、同じものである。」(『ロゴス・モイラ・アレーテイア』マルティン・ハイデッガー、宇都宮芳明訳、1983、理想社p.28)」
by yojisekimoto
| 2007-11-12 17:49
| ハイデガー
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