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プルードン人民銀行、株券と流通券

河出書房新社『神もなく主人もなく1』より、人民銀行株券↓
(交換銀行に株券はない。)
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仏版『社会問題の解決』より、人民銀行流通券↓

プルードン人民銀行、株券と流通券_a0024841_185396.jpg


(人民銀行流通券に関しては、『人間の経済』78号森野栄一「プルードンの夢」*に詳しい。http://www.grsj.org/book/booklibrary/ningennokeizai_78.pdf同html
*以下、『人間の経済』第78号p26より
「人民銀行の「流通券」見本には、券面にこうあります。

5フランシリーズ 人民銀行 No.***
5フラン流通券
加入者各位
一覧後、支払指図に対して、人民銀行が受領した総額5フランの、
諸君の産業の商品や生産物、用益で持参人に支払う
署名 P.J.PROUDHON et Co.
経理人 ****(署名)

<上記の他に、左右に、人民銀行という協会の約款、18条、20条が記載されています>

18条(左端に記載)
通常の正貨で支払われる銀行手形と異なり人民銀行券は永遠の社会的性格をもつ引渡指図であり、あらゆる組合員ないし全加入者によって、その事業や職業の生産物あるいは用益によって支払われる。

20条(右端に記載)
流通券は協会の全加入者にあらゆる支払いで受領される。協会は正貨での払い戻しを行わない。協会ヘ任意のものでしかないが、加入者のところでの受領の義務を保証する。加入者の名称、職業、住所地の一覧は協会の事業所に掲示されるであろう。

* * *
まさに、生産物は生産物と交換されるというJ.B.セーの公理(セー法則)を現実に実現しようとするひとつの計画であるといえましょう。この流通券の仕組みは、会員になった企業は財や役務を引き渡す代わりに流通券を受け取ります。しかし、実際に人民銀行にそれらが引き渡され、人民銀行の「倉庫」におかれるわけではありません。会員は他の会員が代価支払いに使用する流通券を受け入れ、財・役務を引き渡すわけで、実際には流通券の100%受領を保証させるために人民銀行は財の引き渡しを文言上で求めているにすぎないといえましょう。したがって、銀行を宛先とする手形によって銀行から融資を受ける手法と似ていなくもありませんが、決済が実物で行われること(流通券による会員間売買)、つまり銀行に対して決済をせず、会員間売買で実質的に決済が行われること(相互信用)、正貨による割引がふさがれていること(手形融資では、これに係る利子が割引分にあたるが。)などが異なっているようにみえます。要するに会員企業の自己の生産能力や生産物を根拠に、それらが交換されるのに使用される手形を流通券として人民銀行が発行し、会員に給付し、流通させるシステムともいえましょう。」(引用終わり)

以下、参考までに以前ブログ↓に載せた交換銀行定款を転載いたします。
http://blog.livedoor.jp/yojisekimoto/archives/50800239.html

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 プルードン交換銀行の定款(「人民の代表」1848.5.10)を『自由経済研究』vol.11,1997.8より引用します。森野栄一さんの訳です。
抄訳ですが、興味を持った方は、ぱる出版に問い合わせて購入してください(郵便振替による後払いで購入できます。一冊1000円です。森野さんに問い合わせれば、半分WAT払いで買えます)。
 国民通貨による出資を求めた民間資本による人民銀行や、ナポレオン三世政権下の永続博覧会計画は、また別の「後退戦」として研究されるべきかと思われます。
 第十九条にあるように貸付と交換は業務としては分かれていますが、信託と交換を同時に行なうというアイデアが画期的でした(これは今日のLETS・地域交換信託制度につながります)。また市民による集合的信用は、市民バンクにつながります。第三三条には競売のアイデアもあります。金貨は小銭としてしか流通しないようになるというのは先駆的なアイデアだと思います。
 交換銀行、人民銀行はプルードンにルイ・ボナパルト侮辱の罪で逮捕状が出て実動されないまま終わります。プルードンは亡命先のベルギーから清算のため帰国したところを逮捕されます。
 プルードンに関しては推薦サイトがいくつかありますが(下に付記します)、復刊ドットコムが最重要かも知れません。
http://www.grsj.org/colum/colum/prouhdon_kaheikaikakunitsuite.htm
http://www.thought.ne.jp/html/text/socio/07anc4.html


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 交換銀行設立計画

 交換銀行設立計画
 国有交換銀行
 基本定款
 下記署名者の、卸売商人、職人、企業家、産業家、所有者、経済学者、法律家、教師、著述家、芸術家、あらゆる種類の、またすべての身分、職業の生産者たちの間で、下記事項の合意、決定をみた。

第一編

《一般条項》
第一条 署名者および本約款に同意するもの全員が、国有交換銀行の名称のもとに商業組合を構成する。
第二条 組合員の目的は下記の通り。
 一、交換銀行を設立することで、組合の各成員に、貨幣の助けなしに、特にまた即刻に、あらゆる生産物や食料品、商品、サービス、労働を獲得させ、
 二、その後、生産者の条件を変更して、農業および産業労働の再組織化をもたらす。
第三条 組合は万人のものである。
 全市民は、例外なく、これに属するよう要請される。組合員であるためには、いかなる出資も必要ではなく、本定款に同意し、交換銀行の信用紙券でのあらゆる支払を受け入れるだけで十分である。
第四条 組合は資本を有しない。
第五条 その有効期間は無制限である。
第六条 その所在地はパリに置く。                    
第七条 交換銀行は本質的に共和制的な制度であり、人民による人民の統治の典型である。また、位階制的で封建的な原理のどのような復興にも敵対する活力ある抗議であり、市民的なまた政治上のあらゆる不平等の事実を廃止する。金の特権は廃止され、すべての特権が消滅する。交換の相互性の必然的帰結である交換における平等が、翻って、労働における平等、現実的な連帯性、個人の責任性、絶対的自由の基礎となる。結局、交換銀行は、無限の富と全般的で永遠の平和の原理としての用具、また保証である。

《交換銀行の構成原理》           
第八条 国有交換銀行は以下の諸原理を立てる。
 労働するとは無から生み出すことである。
 信用を与えるとは交換することである。
 交換するとは資本化することである。
 これは定式として相互性を有する。   、
第九条 従って、交換銀行は貨幣の助けなしにあらゆる生産物の交換を実行し、貨幣を出資することなく生産物を無限に増加させるための信用の制度である。
第十条 貴金属貨幣の代わりに、交換銀行は社会的な紙券を使用する。
第十一条 この紙券は普通の銀行券のように貴金属貨幣を代泰しない。組合の各 成員のさまざまな個々の債務とその根拠となる種々の生産物とを代表する。
第十二条あらかじめ全組合員に受け入れられた交換銀行の紙券は、次々と循環し、各組合員の生産物をうるのに役立つ。つまり、交換手段としての貨幣に取って代わるのである。組合員であることと交換券の拒否とは両立しない。第十三条 交換券の過剰発行はありえない。生産物の引き渡しに応じて、また引き受け手形ないし引き渡しに由来する債務の代わりに発行されるからである。
第十四条 要するに、その減価は不可能である。
 紙券はつねに、これの発行の原因である生産物と生産者および裏書人の責任によって担保されているからである。
第十五条 交換銀行は利益をあげない。

《交換券について》
第十六条 銀行の紙券は交換券と呼ばれる。交換券の種類は、二十、百、五百、千フランである。
第十七条 交換券は銀行とあらゆる組合員の間で、あらゆる種類の商品およびサービスといつでも交換できる。
 逆にあらゆる種類の商品およびサービスは銀行で交換券と交換できる。
第十八条 交換券は現金で編纂できない。
 少額の差額のみが通貨で精算される。

《交換銀行の業務》
第十九条 交換銀行の主要業務は次の通り。
 一、交換券と呼ばれる社会的な紙券の発行。
 二、二名の署名のある商業手形の割引、この手形の期限は問わない。
 三、引き受け証書ないし手形の割引。
 四、委託品の販売および購買。
 五、有担保貸付。
 六、所有者および耕作者に対する不動産信用。
 七、無料の支払および取り立て。
 八、融資。
第二十条 交換銀行の組合員に限り、その種々の特典を認められる。

《割引について》
第二一条 組合員の有価証券は個人的な性格しかもたないが、割引とはこれを一般的性格をもつ組合の紙券と交換することである。
第二二条 普通の銀行では、割引は現金ないしその典型である銀行の銀行券で行われる。これは、通貨と呼ばれる領主の名において行われる流通に対する先取、料金徴収権、領主権である。
  交換銀行では、流通は媒介物なしに行われる。貨幣はそこではただ、通貨ではなく、製造され、購入され、受領された生産物を代表する標章である。その支払いは生産者、消費者、そして裏書人全員によって保証される。そこではつまり、これを相互に受領しあうことから、交換者各自は銀行に対して株主ないし資本家の役割を果たし、割引に際しなにも先取されず、ただ銀行の運営費の ための手数料のみが徴収される。
第二三条 この手数料のみが徴収される。
第二四条 本行は、購入されるか販売されるかした、また引渡しが終るか近々引 き渡される生産物を表す証券ないし債券のほかには割引かない。
第二五条 割引は二名の署名のあるものに、またどのような期日のものに対しても行われる。
第二六条 割引信用は実際の取引、つまり信頼できる購買者が前もって生産物を引き受けるような場合、制限されない。
第二七条 二名の署名のある証券ないし債券はつねにもたらされる商品の内容と数量とを明示しなければならない。
第二八条 この点に関してなされたあらゆる不正行為およびごまかしは詐欺で告訴される。
第二九条 まさしくこうした考えから、本行は割引に際し、注文品や受領された送り状を受け取る。

《委託品の販売および購買について》
第三十条委託品の販売および購買は商店の混雑をなくし、商業と産業を安全なものとし、販路のない生産物を市場にもたらす手段である。
第三一条 本行は、状況に応じてまた組合員の商品の内容にしたがって、原価の二分の一、三分の二、四分の三、五分の四で購入する。組合貝はこれらを特恵委託品に関する法規(民法、1932条)によって委託する。
第三二条 委託証書で定められた期日まで、委託販売人は、可能な限り最良の条件で販売することができ、本行が前払いした金額しか返済しなくてよい。
第三三条 期日経過後は、本行は、委託品を、組合員であると非組合員であるとを問わず安値の機会を利用したいとする全市民の競売にかけ、売却させる。
第三四条 委託品の固定価格を超、量販売で、去れた価格の超過分は、当該超過分の5パーセントを本行の手数料として控除して、商品所有者のものとなるであろう。
第三五条 販売が実行されて、委託品の保有者は委託された商品の引渡しをおこなう。
第三六条 国家はその債券をもって、製造薯はその生産物をもって、商業者はその商品をもって、労働者はその力能をもって、芸術家はその作品をもって、所有者はそのアパートや家屋、土地、機械の賃貸料をもって、持参人はその国債をもって、要するに全市民が前払いをうるためのこの結合から利益をあげることができるし、お互いに、万人がなるたけ安く生産したいとしている原料価格やまた機械の賃貸料、サービスの大幅な切下げを手にいれて利益をあげることができる。

《保証人信用貸付》
第三七条 本行は信用貸付を開設する。
第三八条 必要な担保は保証人の推薦だけであるが、本行が間違いのない人で有効と判断するかどうかによって、二人ないし数人が必要である。
第三九条 保証人は連帯責任を負い、その一人ひとりが全員の責任を負う。
第四〇条 本行は組合員のほかは保証人として認めない。
第四一条 信用供与された組合員が返済を行わない場合、本行は償還について保証人と協議する。

《不動産信用》
第四二条 本行は土地所有者および耕作者に、長期、年賦払いの契約に基づき前貸しを行う。
第四三条 長期、年賦払いのこの契約は抵当によって保証されるが、これは、委託商品の購入、販売のそれと類似の責務である。
第四四条 本行は所有地をその価値の四分の三で先物で購入し、これを所有者に委託する。所有者は全収穫物を我が物にするにもかかわらず、その責任ある管理者になる。
第四五条 指定された期日に土地所有者が貸与された前払いを返済しない場合は、本行は所有地の引渡しを受け、耕作者に引受けさせる。
第四六条 土地を失っても所有者は、自身とその家族のために、本行が定めた条件で小作農ないし管理者としてその所有地に居住し耕作する特権を有するであろう。

《当座勘定での信用、無料の支払いおよび取り立て》
第四七条 本行は全組合員のために無償でパリと地方での支払いおよび取り立てを行う。
第四八条 本行はこのために組合員各自の当座勘宴開設する。支払いの大部分を要するのには、たんなる一方の当座勘定から他方のそれへの移転で十分である。

《現金注文について》
第四九条 交換銀行はその影響力、知性の権威、前貸し金をもって、農業上、産業上、商業上、科学上等々のあらゆる企て、労働者協同組合および労働者組織のあらゆる試みを教唆し、かき立て、これに助言を与え、助成し、後援し、出資する。これはごく当り前の与件のなかで、成功への申し分のない保証であろう。
第五〇条 各地方の最も一般的な利害を代表する交換銀行は、従って集合理性の表現であり、また体制のあらゆる偏見から解放されてもいる。交換銀行は、いかなる理念にも、どのような学派に同情心も敵対心も抱かず、いずれの教義の判断にも基づくものではない。
第五一条 その上、交換銀行は流通と信用の特殊な器官であり、あらゆる生産的諸力の集中点であるが、どのような企てにも専心することはなく、いまあるいくつかの種類のいかなる取引や事業にも、直接的にも間接的にも干渉しない。
  交換銀行はそれ自身の事業の責任のほかは認めないし、引き受けない。
第五二条 交換銀行は、計画が富の生産、分配、消費の主要な諸原理に従っているかを判断するだけであり、それ自体が自由、平等、相互性、非人格性が高度に結合しているのがみられる組織の典型と自認している。

 これで定款の第一部がやっと終わりである。第二部(五三条から八〇条)は、《本行の組織と管理》と題され、交換銀行の組織的側面が扱われているが、これは省略する。

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追記:

付録として、1848年5月8日「人民の代表」に発表された「政治問題と経済問題の同一性、解決の方法」より。LETSの原理との近さがわかると思います。
「自由経済研究」vol.20.2001.12より、森野さんの訳です。


「(中略)誰もが認めることは、異なった場所に居住する三人以上の交換者が、同じ時に、それぞれ他の人間の生産物を知り、欲するならば、彼らの生産物と役務を直接に貨幣の助けなしに交換するような方法で交換することができるということである。
 このことはおのずから明らかであり、理論上明白である。なぜなら三人以上の交換者は二者で交換するのと
同様であるからである。また実践上もあきらかである。口座振替でいつでも行われるからである。従って、こ
の点で少しの困難もない。
 この原理はただ貨幣の廃止を意味しているだけであるが、これにしたがって交換銀行の観念が獲得される。
 交換銀行は交換者に対して、諸国のあらゆる生産者や消費者の事業状況や能力、支払い能力、生産の重要度、そして特に重要な彼らのもつ欲求を個人的に知っているかのように現れる。
 いかなる政治上の激動も決して生産者と消費者の関係を断ち切り、生産物の交換を中断しえないにしても、交換銀行がお互いに関わりあうには時間がかかるすべての生産者と消費者に無償で生産物と販路を提供するのは、この知識によってこそなのである。
 交換銀行はその組織によって交換銀行なのである。随所に現れ、誰にでも情報を与え、交換銀行は各交換者にこう言うのである。当行に諸君の請求書、交換券、約束手形を与えよ、当行に諸君の商品針委託せよ、当行のもつ無数の関係によって、補償金もいらず、割引料もなく、利子もなく、諸君のあらゆる取引を引き受けましょう。
 従って、ここでは貴金属貨幣の銀行が交換の銀行に転換され、間接的交換は直接的交換に代えられ金属の役割は廃止され、一種の振替に転換される。否定が肯定に転換されるのだ。
 我々はこの改革からどのような利益を引き出すことができるのであろうか。これが労働者にもたらすものはなんであろうか……。」
by yojisekimoto | 2008-03-26 18:45 | プルードン


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