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ゲーテからヘーゲルへの贈り物

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↑写真:大月書店『ヘーゲル 伝記と学説』(p79より)

以下、邦訳『ヘーゲル伝』(ローゼンクランツ、p293-4より)
「ゲーテは一八二一年の初夏に、彼に酒盃をひとつ贈ったが、それには彼の理論の主な要点をはっきりと判らせたもので、次のような直筆の題辞が書かれてあった。

 絶対者に対し、
 温かく受け入れられたことについて、
 原現象*は、
 心をこめて、
 ご挨拶に申しあげます。

未刊の一書簡(略)の中で、ヘーゲルはユーモアを交えた格式ばった口調で礼を述べた。彼が言うには、酒というものはいつも自然哲学の偉大な同盟者であった。というのは酒は世界に向かって、精神(ガイスト)が自然の中にもあることをはっきりと証明しているからである**。しかしゲーテから彼に送られたもののように教訓的な盃はまことの世界盃であって、そこで暗黒のアーリマンが光明のオルムズド***の啓示の引き立て役を勤めている。また古代人たちも、神秘的なディオニソスのもろもろの象徴のなかから、ひとつの盃を彼に与えることを忘れなかったのである。」

*カント的には物自体、スピノザ主義的には実体ということだろう。ゲーテは後者の立場をこの場合は取っている。
**英語のスピリットと同じようにドイツ語のガイストにはアルコールの意味がある。
***ゾロアスター教の善の神の別名。『精神現象学』の「宗教/A自然宗教/a光の神」参照。

ちなみに『精神現象学』のラストのシラーの詩は以下、

  この精神の王国の酒杯から
  精神の無限の力が沸き立つのだ。(長谷川宏訳)

ゲーテはヘーゲルが採用したこの一節を意識していたのかもしれないし、さらにはヘーゲルのトリアーデに対し円形モデルの優越性を提示したかったのかもしれない。
by yojisekimoto | 2008-12-05 13:52 | ヘーゲル


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