もう4年ほど前、友人のベトナム反戦運動で知られる作家の小田実へのインタビューに同行したことがある。
ビデオカメラを担当していたのだが、何の拍子にか話しかけられ「ずいぶん修行をしたんだろ?」的な言葉をかけられた。 僕は『何でも見てやろう』をあわてて読んだくらいだったので、小田実のすごさがわからなかったが、どんな人間も対等に扱うという信念のようなものを体全体から感じた。 関西弁を話すせいか、柄谷行人を連想したが、この連想はそれほど間違いではないと思う。明らかに両者ともアナーキズムの方向へ一歩づつ歩いて行っている先行者だからだ。 もちろん柄谷は『思想の科学』あたりへの評価は厳しいのだが、資質的には正反対な二人はそれほど思想的にはなれている訳ではないどころか接近しつつあると感じたものだ。 さきの発言にも職業組合を大事にするアナキズム的な発想があったと思う。 本題は、その日行われた講演会で『黒いアテナ』の話題が出たことだ。 『黒いアテナ』は1992年に出版され、ギリシアの文化を創ったのが有色人種であることを明確にし、物議をかもしたものだ。 たとえばこれに従えば、ハイデガーのいうギリシャ哲学などというものは存在しないことになる。 もちろん1960年代にドッズの『ギリシア人と非理性』を背景に、パゾリーニあたりが芸術的な成果をすでに出してはいたが、学問的なインパクトはこちらの方が大きい。 実は、その『黒いアテナ』をやっと最近読んだということを書きたかったのだ。そしてそのことでやっと小田実への追悼文を書けると思ったのだ。 小田はその翻訳出版に尽力していたが、そのことは『黒いアテナ2』上巻の冒頭に詳しい。 ギリシアの民主主義は、小田が学生時代から研究したものであり、その民主主義と平和主義の両輪は小田の市民活動の両輪だった。 講演会では、ドナルド・キーンがみずからの第二次大戦のペレリューでの戦闘を扱った『玉砕』を翻訳してくれたという話題も出た。この小説はアメリカでラジオドラマになり、評判になったそうだ。 詳細:毎日新聞『玉砕』書評 英語版の序文でキーンは自らの通訳及び情報担当だった戦争体験を赤裸々に語り、小田が小説の中であかさなかったモデルとなった島のペレリュー等の名を類推している。 戦争があったからこそアメリカの日本研究が進んだというのは柄谷がよく言っているが、その代表例がキーンなのだと痛感した。 話は小田実に戻るが、憲法第九条がらみのインタビューは、小田がエッセイに触れることとなった。 <この歌のことをあらためて考えたのは、最近ロックを演奏して反戦運動をやっている若者男女三人が私のところに「わたしたちは戦争を知らない子供たちです」と言ってやって来たからだ。三人とも「9」と大きく印字したシャツを着ていた。ひところはやった「ジャパン・アズ・ナンバー・ワン」をもじって「ジャパン・アズ・ナンバー・ナイン」として「9」を印字し、まわりに「憲法九条」を英語、ロシア語、アラビア語、韓国語に訳して取り巻かせるという趣向のシャツで、なかなかいかした。> (小田実「戦争を知らない大人たち」『西雷東騒2』岩波書店p176。以下でネット公開されている。) http://www.odamakoto.com/jp/Seirai/040727.shtml 何のことはない。取材したつもりが取材されていたのだ。 プルードンならこれを相互主義と呼んだだろう、、、、、 小田実が2007年7月30日に亡くなって今年で二年経つ、、、、
by yojisekimoto
| 2009-01-24 00:00
| 歴史
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