岩波文庫の表紙にも採用されているが、ホッブズの『リヴァイアサン』初版(1651年)の扉に面白い銅版画がある。
![]() ![]() (標語は"Non est potestas super terram quae comparetur ei"「彼に匹敵しうる力は地球上に存在しない」ヨブ記 41 章 24。〜通常は原典の聖書に出てくる怪獣のイメージで語られることが多い。) 拡大しないとよくわからないが、無数の人々が一人の王の姿を形作っているのだ。 ![]() (田中純『イメージの自然史』では下半身人魚説が提示されている。その方が、神秘的なるが故に権力を持つというシュミットの理論にも適ううらしい。) ところで、こうした図は銅版画という細密画の技法がなければ不可能だし,印刷技術が進歩しなければ不可能だったろう。これは最近のWeb上の集合知を使った電脳市民性論にも言えるだろう。個々の個性を活かしつつ社会をまとめるには技術が必要だということだ。 ただ、ホッブズよりも自然権を重視しようとしたスピノザの考え方等は、単なる技術論に収まらない洞察を必要としている。それは無限に関する数学的な考え方の転換でもあるだろう。 冒頭の版画に戻ると、この絵の王のモデルは剣を持っているのでクロムウェルにも見えるし、髭を蓄えているので1648年に処刑されたチャールズ一世にも見える。亡命したホッブズは両者の相克のなかで『リヴァイアサン』を書いたと思われるので、この銅版画の表情は絶妙と言えるだろう。 以下は、『クロムウェル』を扱った映画。最近日本語版DVDが再版された。 主演はアイルランド人だそうだが(クロムウェルはアイルランドに圧政を敷いた)、これも絶妙な配役と言えるかもしれない。 追記: カエサルが『ガリア戦記』で記述し、映画にもなったスコットランド・旧ガリア人の祭り、生け贄の儀式で燃やすウィッカーマンにも似ている。図版は18世紀のもの。 ![]() 英語でウィッカーマン(wicker man)という呼称は、編み細工(wicker)で出来た人型の構造物を意味する。 古代ガリアの宗教儀式としてのウィッカーマンについては、カエサルの『ガリア戦記』やストラボンの『地誌』の中で紹介されている。 『ガリア戦記』第6巻16節には次のような一節がある。 Alii immani magnitudine simulacra habent, quorum contexta viminibus membra vivis hominibus complent; quibus succensis circumventi flamma exanimantur homines. ある者らは、恐ろしく巨大な像を持ち、その編み細工で編み込まれた肢体を人間たちで満たして、それらを燃やして、人々は火炎に取り巻かれて息絶えさせられるのである。 このような人身御供は、ガリアのローマ化によって絶えたと思われる。近世になって、ケルト人への関心の高まりとともに、ウィッカーマンは人々の好奇心をかきたて、(右の図のような)さまざまな想像画が描かれた。 以上wikiより
by yojisekimoto
| 2009-12-08 22:44
| 研究
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